 長浜海岸を走る楠さん。 |
長浜海岸の奥の砂浜に行ったことがあるだろうか。古代の伝統漁法「スクイ」のある堤防の先、生い茂った草むらをぬけて、堤防の上を歩き、流木と岩だらけの浜を抜けてさらにその先、一本だけ場違いなように生えている南国の木が目印の砂浜が見えてくる。毎日夕方4時ごろになると、楠さんはこの70~80mほどの砂浜を10往復する。走るのは、夜に美味いビールを飲むためだ。
 長浜海岸にあるスクイ。 |
長浜海岸は、片町・新田町町内にある楠さんのおすすめの場所。スクイの会の一員でもある楠さんには思い入れの場所でもあり、毎日通う日常の場所でもある。スクイとは、干満の差の激しい有明海で古代より行われてきた漁法で、満潮の時は積み上げられた石垣の中に魚が入り、干潮になると取り残される仕組になっている。今では年に一回魚のつかみ取りができる「スクイ祭り」のときのみ行われるが、長浜海岸に来ればスクイの石垣を近くで見ることもできる。
町内には、島原駅、ハローワーク、県南保健所、特別支援学校など、島原市の主要な施設が集まり、病院や福祉施設、ホテルなどもある。昭和50年代、「片町」という町名が、市の町名町界の整理で片町と新田町になり、町内会の運営は今まで通りでよいという事から大議論の結果「片町・新田町町内会」となった。
町内会長を務めるのは会長歴26年目の楠大典さん。町内会には現在約160名の人が加入していて、町内清掃だけではなく夏の精霊流し、冬の鬼火、スクイ祭りなど地域で行われる行事も多い。「島原駅があるし、少し行けばスーパーやドラッグストアもある。アパートも結構あるので住みやすいまちですよ。」と話す楠さん。大の歴史好きでもあり、家の奥から大きな記念写真やお手製の年号メモを出してきて「歴史やお城が好きな人にも島原はおすすめのまちです。」と、熱く語ってくださった。
長浜海岸を走っていると、奥の砂浜のさらに裏側から南風楼や島原灯台が見える。かなり奥まった砂浜だが時々散歩をしている人がいて、そんな人たちとお喋りするのが楽しみだと話す楠さん。最後に、しまばらんを描いてもらいたいと頼むと快諾してくれた。「しまばらんもくまもんみたいにならんば。」と話しながら、時間をかけて細かいところまで描いてくださる姿が印象的だった。