大三東(おおみさき)小学校を中心にひろがる才木(さいき)自治会には、木蝋づくりの体験ができる本多木蝋工業所や、カステラやかすまきなどを製造する西善製菓舗などの老舗がある他、日本美術展覧会に名を連ねている地元の画家や、元剣道日本チャンピオンなど、個性的な人や場所が多い。才木自治会の会長である隼田さん夫妻にお話を伺うと、お店も、人も、次から次へと紹介したいことを教えてくれた。「才木は個性的な人ばっかりだから、話すことはたくさんあるよ」と話す隼田さん自身も、全国でも数少ないサフランを育てる農家だ。
 収穫されたサフラン |
1つの花から多くて3本程度しか取れないサフランは、希少価値が高く手間がかかるため全国的にも生産が少ない。取材時はサフランの球根を田んぼに植えてすぐのころだったため、田んぼには白いサフランの茎が整列していた。サフランは、畑ではなく田んぼで、コメと交互に育てることによって、より良い土の状態の中で育てることができるそう。
11月~12月ごろになると花が咲き、摘み取り体験をすることもできる。薄紫の可愛らしい花が咲くため畑を見物に来る人もいて、近くには見物用の立て札を立てたり、サフランが育つまでを説明した看板を置いたりしている。季節ごとに花を植えたり、めずらしい野菜を育てたりすることが好きだという奥さまは、花や木が見頃の時は、畑だけでなく庭も開放しているという。
 「はなだご」が子どもたちにへグロを塗る |
才木自治会のある大三東周辺には、代々受け継がれてきた「風除祭(かぜよけさい)」というお祭りがある。夏の終わりに台風などの被害を受けないようお祈りするお祭りで、お神輿のお下りをする際、天狗のお面をかぶった「はなだご」が道案内となって神輿を先導する。はなだごは、行く先々で人々を追いかけまわし「へグロ」と呼ばれる炭の粉を塗りつけ、子どもたちはへグロを塗られまいと町中を逃げ回る。天狗が顔に炭を塗るという祭りは全国的にも珍しく、毎年島原市内外問わず、多くの人が訪れている。
 隼田さん |
才木地区は、大三東小学校を中心に個性的なお店や人が集まることもあってか、十数年ほど前と比べると世帯数が倍に増えているという。駅も近く、有明庁舎や公民館、郵便局、銀行、美人の湯(温泉)も近いため、シニアカーや自転車で行き来している人も多い。最近では、家族連れが引っ越してきて一軒家を建てることが増えたそう。個性的な人たちが暮らし、珍しいお祭りを受け継いでいく才木自治会に人が増えていくことは、自然な流れかもしれない。